2007年02月13日
ブログ小説『彼女が微笑む時』
☆第三話☆
唐木田涼の過去編前編
ターニング・ポイント〜心ない天使の復讐劇〜
真輔と涼はもう6年来の友達だった。その真輔が、遥を見て『3年前の涼と同じ、悪いものを感じる』と言っていた。真輔の言う、3年前の涼はどんな男だったのだろうか…
今から遡ること3年、2003年1月。涼、高校3年の時。それまでは女性に対して奥手だった涼が、最初の彼女・同級生の瀬谷雪奈と付き合い始めてから、彼は変わった。新しい自分に目覚めていった。
雪奈と付き合って1ヶ月で違う女に乗り換え、また次…と、女遊びが激しくなっていったのである。入学以来の友人・真輔もこの変化には驚き、若干呆れて「涼…少しは落ち着いたらどうだ?今までのお前はそんな奴じゃなかったぞ…付き合ったら、もっと女の子を大事にする男かと思ってたのに」
と、はやる涼をたしなめた。しかし、当の本人はそんな忠告もどこ吹く風で、
「まぁ待てよ、シン。俺は何も変わっちゃいないさ。お前、自分が彼女いないからって、ひがんでいるうちに、お前自身が変わっちんじゃないのか?」
と、悪態ついて反論する有り様だった。さすがに真輔もムッとして「変わるもんか!ひがんでもないさ。…まぁいいさ。勝手にするんだな!」
もう涼の女性関係に口出しするのをやめた。涼は相も変わらず、女の尻ばかり追いかけていた。
唐木田涼の過去編前編
ターニング・ポイント〜心ない天使の復讐劇〜
真輔と涼はもう6年来の友達だった。その真輔が、遥を見て『3年前の涼と同じ、悪いものを感じる』と言っていた。真輔の言う、3年前の涼はどんな男だったのだろうか…
今から遡ること3年、2003年1月。涼、高校3年の時。それまでは女性に対して奥手だった涼が、最初の彼女・同級生の瀬谷雪奈と付き合い始めてから、彼は変わった。新しい自分に目覚めていった。
雪奈と付き合って1ヶ月で違う女に乗り換え、また次…と、女遊びが激しくなっていったのである。入学以来の友人・真輔もこの変化には驚き、若干呆れて「涼…少しは落ち着いたらどうだ?今までのお前はそんな奴じゃなかったぞ…付き合ったら、もっと女の子を大事にする男かと思ってたのに」
と、はやる涼をたしなめた。しかし、当の本人はそんな忠告もどこ吹く風で、
「まぁ待てよ、シン。俺は何も変わっちゃいないさ。お前、自分が彼女いないからって、ひがんでいるうちに、お前自身が変わっちんじゃないのか?」
と、悪態ついて反論する有り様だった。さすがに真輔もムッとして「変わるもんか!ひがんでもないさ。…まぁいいさ。勝手にするんだな!」
もう涼の女性関係に口出しするのをやめた。涼は相も変わらず、女の尻ばかり追いかけていた。
それから約1年後の2003年末。再び涼の人生に転換期が訪れた。
それは12月最後の授業の日。涼は久しぶりに雪奈からメールをもらった。
『話したいことがあるから、今日の帰り、正門の前で待っていて欲しい…』
こんな内容だった。丁度その頃、付き合っていた娘もいなかったので、無神経な涼は
『分かった、じゃあ待ってるよ』
と返信した。
…がこれは、涼に振られて他の女に乗り換えられたことを激しく恨んでいた雪奈の復讐の始まりだった。
授業後、約束通り正門前で涼は雪奈と再会した。その時、雰囲気が変わり、自分が知っている頃の雪奈より、格段に綺麗になった彼女に驚いた。
肝心な話の内容は、 『実は自分も涼が初めて付き合った相手であり、ずっと忘れられずにいた…もう一度やり直して欲しい…』というものだった。
単純な涼は考えるまでもなく、二つ返事で受け入れた。
この話を知った真輔は、再び涼に忠告した。「涼、落ち着いて良く考えろよ。話がうますぎるって!昔振った娘が、綺麗になって現れる。しかもまたヨリを戻したいなんて。…その娘には何か、悪いものを感じるんだ」
しかし涼が真輔の言葉に耳を貸すことはなかった。
…雪奈のシナリオ通りに事は進んでゆく。
明けて2004年2月。学校帰り、涼は雪奈と一緒に近くのマックで軽く食事をしていた所、雪奈が急に深刻な顔をして
「実は…大切な話があるの…」
こう切り出した。 「何?」
涼は興味津々で雪奈の言葉を待った。
「実は私…子供が…出来た…みたいなの…」「……………はぃ?」あまりのことなので、涼は言葉を失った。
とはいえ、身に覚えのないことではない。…涼の混乱と動揺は頂点に達していた。
雪奈はその様子を、心の中でほくそえみながら眺めていた。そう、この発言は雪奈のでまかせであった。
妊娠騒動をでっち上げ、涼の心から冷静な判断を奪い、主導権を握る。作戦は計画通り進んでいる。
涼が少し落ち着いたのを見計らって、雪奈はすかさず次の手を打った。
「ごめんね、びっくりさせちゃって…私も、突然のことなんで、どうしていいか分からないの…ねぇ、今日はもう帰らない?涼も動揺してるだろうし、今後どうするかなんて、今話しても冷静な判断はできないと思うの」
「あ…あぁ、そうしようか。…でも!」
「でも?何?」
「誰にも…言わないでくれないか…この事は。…できれば…親にも」
「もちろん。こんな大事なこと、そう軽々しく言えるワケないでしょ?」
そう言って涼をなだめ、家まで送って行った。
明けて翌日。雪奈の告白を受けて、涼は一睡もできなかった。
「おはようございます…」
疲れた顔で教室に入ると、いきなり担任の体育教師に顔面を殴られた。
「何すんだよ!」
「黙れ!殴って何故悪いか!自分の胸に聞いてみろ!」
周りに目を向けると、教室の皆から白い視線が注がれている。もうクラス中の人々が、昨日の事を知っているかのように…
まさか…と思いつつ、雪奈の席の方に目を向けた。すると…雪奈と目が合った。涼の視線に気付いた彼女は、ニコッと微笑んで、手を振った。
『何だ?その表情は?昨日、誰にも言うなと言ったのに…それだけじゃない。こんな重大なこと、軽々しく口にできるワケないと自分でも言っていたのに…何を考えているんだ…雪奈!』
涼には、どうしても雪奈の真意が理解できなかった。
「とにかく、職員室に来い!…瀬谷も、一緒に来るんだ」
涼は雪奈と共に職員室に連行された。
「実はあの話、嘘なんです」
担任に事情を聞かれると、雪奈はいとも簡単に白状した。雪奈にしてみれば、この時点で復讐は完了していた。妊娠騒動をでっちあげ、涼の評判と信用を落として心を折る。その上教師の鉄拳のおまけ付きである。 「嘘ってお前…」
涼と担任は声を揃えた。
「でも何のために、そんなことをしたんだ?」
担任が呆れた様子で尋ねると、雪奈はキッと涼を睨み、
「私は去年、彼に捨てられたことが本当にショックで…黙って引き下がってられなかったんです」
こう、平然と言い放った。涼は何か背筋に冷たいものを感じた。 『女は怒らせると恐ろしい…これからはもっと大切にしてあげないといけないな…』
この1件以来、雪奈に頭が上がらなくなり、彼女を大切にすることを誓った涼。
しかし、切れかけた糸はそう簡単には元に戻らず、思いもよらない方向へと進んでいく。
〜第四話に続く〜
☆感想ご意見があったら送って下さい。よろしくですm(__)m
それは12月最後の授業の日。涼は久しぶりに雪奈からメールをもらった。
『話したいことがあるから、今日の帰り、正門の前で待っていて欲しい…』
こんな内容だった。丁度その頃、付き合っていた娘もいなかったので、無神経な涼は
『分かった、じゃあ待ってるよ』
と返信した。
…がこれは、涼に振られて他の女に乗り換えられたことを激しく恨んでいた雪奈の復讐の始まりだった。
授業後、約束通り正門前で涼は雪奈と再会した。その時、雰囲気が変わり、自分が知っている頃の雪奈より、格段に綺麗になった彼女に驚いた。
肝心な話の内容は、 『実は自分も涼が初めて付き合った相手であり、ずっと忘れられずにいた…もう一度やり直して欲しい…』というものだった。
単純な涼は考えるまでもなく、二つ返事で受け入れた。
この話を知った真輔は、再び涼に忠告した。「涼、落ち着いて良く考えろよ。話がうますぎるって!昔振った娘が、綺麗になって現れる。しかもまたヨリを戻したいなんて。…その娘には何か、悪いものを感じるんだ」
しかし涼が真輔の言葉に耳を貸すことはなかった。
…雪奈のシナリオ通りに事は進んでゆく。
明けて2004年2月。学校帰り、涼は雪奈と一緒に近くのマックで軽く食事をしていた所、雪奈が急に深刻な顔をして
「実は…大切な話があるの…」
こう切り出した。 「何?」
涼は興味津々で雪奈の言葉を待った。
「実は私…子供が…出来た…みたいなの…」「……………はぃ?」あまりのことなので、涼は言葉を失った。
とはいえ、身に覚えのないことではない。…涼の混乱と動揺は頂点に達していた。
雪奈はその様子を、心の中でほくそえみながら眺めていた。そう、この発言は雪奈のでまかせであった。
妊娠騒動をでっち上げ、涼の心から冷静な判断を奪い、主導権を握る。作戦は計画通り進んでいる。
涼が少し落ち着いたのを見計らって、雪奈はすかさず次の手を打った。
「ごめんね、びっくりさせちゃって…私も、突然のことなんで、どうしていいか分からないの…ねぇ、今日はもう帰らない?涼も動揺してるだろうし、今後どうするかなんて、今話しても冷静な判断はできないと思うの」
「あ…あぁ、そうしようか。…でも!」
「でも?何?」
「誰にも…言わないでくれないか…この事は。…できれば…親にも」
「もちろん。こんな大事なこと、そう軽々しく言えるワケないでしょ?」
そう言って涼をなだめ、家まで送って行った。
明けて翌日。雪奈の告白を受けて、涼は一睡もできなかった。
「おはようございます…」
疲れた顔で教室に入ると、いきなり担任の体育教師に顔面を殴られた。
「何すんだよ!」
「黙れ!殴って何故悪いか!自分の胸に聞いてみろ!」
周りに目を向けると、教室の皆から白い視線が注がれている。もうクラス中の人々が、昨日の事を知っているかのように…
まさか…と思いつつ、雪奈の席の方に目を向けた。すると…雪奈と目が合った。涼の視線に気付いた彼女は、ニコッと微笑んで、手を振った。
『何だ?その表情は?昨日、誰にも言うなと言ったのに…それだけじゃない。こんな重大なこと、軽々しく口にできるワケないと自分でも言っていたのに…何を考えているんだ…雪奈!』
涼には、どうしても雪奈の真意が理解できなかった。
「とにかく、職員室に来い!…瀬谷も、一緒に来るんだ」
涼は雪奈と共に職員室に連行された。
「実はあの話、嘘なんです」
担任に事情を聞かれると、雪奈はいとも簡単に白状した。雪奈にしてみれば、この時点で復讐は完了していた。妊娠騒動をでっちあげ、涼の評判と信用を落として心を折る。その上教師の鉄拳のおまけ付きである。 「嘘ってお前…」
涼と担任は声を揃えた。
「でも何のために、そんなことをしたんだ?」
担任が呆れた様子で尋ねると、雪奈はキッと涼を睨み、
「私は去年、彼に捨てられたことが本当にショックで…黙って引き下がってられなかったんです」
こう、平然と言い放った。涼は何か背筋に冷たいものを感じた。 『女は怒らせると恐ろしい…これからはもっと大切にしてあげないといけないな…』
この1件以来、雪奈に頭が上がらなくなり、彼女を大切にすることを誓った涼。
しかし、切れかけた糸はそう簡単には元に戻らず、思いもよらない方向へと進んでいく。
〜第四話に続く〜
☆感想ご意見があったら送って下さい。よろしくですm(__)m
Posted by ヤギシリン。 at 22:08│Comments(0)