2007年02月25日

小説とは関係ありませんが…一言

世の中にはガンダム好きの人がたくさんいます。
私もその一人。
で、去年まではZが一番だったんですが、この前SEEDを観て考えが変わりました?
あれはヤバい?面白すぎる?
特に好きなシーンは、キラを倒した後のアスランと、カガリの会話。本当に泣けます。
そこと、ムウがアークエンジェルを守って死んでしまうシーン。これも、泣けます?

好きなキャラはイザーク・ジュール。
彼は最高です?
あの白髪のおかっぱ頭もいいですが、何故かいつもキレているような口調がナイスです?
ザフトなのに、最後の方ではカガリ助けちゃったり、続編のディスティニーでレクイエム破壊に協力しちゃったりと、『(主人公サイドからみて)敵側なんだけど、あんまり悪にしたくない』という、作者の声が聞こえてくるようです( ̄▽ ̄)ステキです?

ガンダムファンの人もそうでない人も、一回SEEDを見よう?あれは、人生の縮図です?
  


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2007年02月14日

ブログ小説3

『イエスタデイ・マグナム~揺れる天秤~』
エピローグ・過去を撃て!


「…気分はどうかな?久が原さん」
新宿の廃墟ビルで俊と対峙し、重傷を負わせた悠。
その場を去り、今度は、世田谷にある謙三の自宅に場所を変え、縛り上げた謙三…そしてその娘・蓮を前にしていた。
というのも、俊を負傷させた後、その足で謙三の家に直行。俊というリーダーを失って弱体化した謙三の私設護衛チーム『壬生狼』を一掃し、謙三宅に侵入。謙三を発見するなりすぐに縛り上げ、前々から拉致してあった蓮と一緒にリビングのソファーに並べたのであった。
謙三を見下ろして吐く悠の言葉には、優越感があった。
「な…何だお前は?一体私に何の恨みがあってこんなことを?」
当の謙三は、本気で悠の事を知らなかった。蓮田大地の白虎隊が壊滅した当初、悠はまだ22歳で、組員としては下っぱだった。それに謙三も、俊がリーダーを務める『壬生狼』の様な護衛チームを作っておらず、揉め事はいつも外部の人間を使って解決させていた。
そんなこともあって、謙三にとって、悠に縛られるなどということは正に晴天の碧歴だった。
「ふふ…俺が誰か分からないのか?ま…無理もないか。お前の放った刺客に組織が潰された時、俺は下っぱだったからな」
「組織…?刺客?」
「教えてやるよ。俺は白虎隊の生き残り…竹ノ塚悠だ」  続きを読む


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2007年02月14日

ブログ小説3

『イエスタデイ・マグナム~揺れる天秤~』
後編・対決~義という名のエゴ~


「兄ちゃん…お腹空いたよ…」
降り頻る雨の中。悠は幼い俊の手を引きながら、夜の新宿の街をさまよっていた。
「我慢しろよ、俊。俺だって腹減っているんだ。口に出すと余計に食べたくなるぞ」
悠達二人の父親は酷い男で、何か嫌なことがあると、その度に悠達を殴った。幼い二人に抵抗出来る力などあるはずもなく、ただひたすら耐える日々が続いていた。が、
『このままでは殺されてしまう』
危機感を覚えた悠は、ある日俊を連れて家を飛び出した。
『家を出たはいいけど、これからどうしよう…』
行くあてなどなかった。ただ父親から逃げたい。その一心で家を出た悠達だが、今度は飢えと寒さが二人を襲った。
『あぁ、この世に神様なんていないのかな…なんで俺達だけこんな目に遭うんだろう』
死にそうになり、希望を失った悠は世の中を、自分の運命を呪った。そんな時…
『…大丈夫か?寒そうだな』
と救いの手をさしのべたのが、蓮田大地だった。彼は白虎隊というヤクザのボスだったが、悠と俊を実の子供のように可愛がった。
『助けてくれたのは感謝してます…でも何で、僕らにこんな良くしてくれるんですか?』元気を取り戻した悠は、蓮田に聞いた。すると蓮田は笑って、
『困った時はお互い様だろう?それに…俺には子供がいないからな。それもあるんじゃないかな』
そういって、悠の頭を優しくなでた。
その言葉にひどく感動した悠は、
『この恩は一生忘れない…いつか必ず、あなたに恩返しをします』こう誓い、俊には
『いいか俊、大地さんは俺達兄弟の命の恩人だ。大地さんが困っていたら、必ず助けるんだぜ。いいな』
と言ってきかせた。
『うん、わかったよ兄ちゃん』
こうして兄弟は蓮田大地に尽くすことを決めた。悠12歳、俊8歳の時のことであった。  続きを読む


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2007年02月14日

ブログ小説3

『イエスタデイ・マグナム~揺れる天秤~』
中編・再会


俊が記憶を失って5年。その間、ずっと自身の過去を思い出そうとしていた。されど、糸口はなし。
『俺は一体誰なのだろう』
自問自答する日々。そんなある日、届いた手紙。
『お前の過去を知っている。真相を知りたければ、指定した時刻、指定した場所に来い』
差出人は誰なのか?俊はいても立ってもいられなくなった。
「謙三さん…今日のお嬢の見送りは、休ませてくれませんか」
俊はいつも、蓮を小学校まで連れて行くのが朝の日課だった。
手紙の相手の指定した場所は新宿、時間は10:00。謙三の住む駒沢から蓮を送り、新宿に向かおうとすると指定時刻に間に合わなくなってしまうのだ。
「?どうしたんだ俊?蓮を送るのは君の日課だったじゃないか」
「…俺の過去を知っているという奴から手紙が来た。嘘かもしれないけど…そいつに会って、真相を知りたいんです」
俊は真っ直ぐ謙三の目を見た。
「…なるほどね。じゃあ、最終ジャッジは本人にしてもらおうか」
謙三は俊の後ろを指さした。振り返ると、俊の後ろには蓮の姿があった。どうやら今のやりとりを聞いていたようだ。
「お嬢」
「俊坊、私なら平気だよ。もう子供じゃないし、学校くらい一人で行けるよ」
そう行って笑顔を見せた。
「…だそうだ」
「…ありがとうございます。お言葉に甘えます」
俊は深々と頭を下げ、足早に家を出た。  続きを読む


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2007年02月14日

ブログ小説3

『イエスタデイ・マグナム~揺れる天秤~』
前編・過去からの手紙

「はぁ…はぁ…捕まってたまるか!」
2001年11月。冷たい雨が降りしきる中、久が原俊は夜の新宿の路地を、傘もささずに駆け回っていた。
「どっちへ逃げた?」「!いたぞ、あそこだ!」
俊の後ろから、黒スーツの男が二人、追いすがって来た。
必死に逃げる俊。追いかける二人。両者の距離は次第に縮まってきた。
「くぅ…このままじゃ捕まっちまうぜ」
最初はただひたすら、真っ直ぐに走っていた俊だが、急に方向を変え、右側の細い道に入った。
そして、突き当たってすぐの場所にあったビルに駆け込んだ。
「!なんだあいつ…悪あがきしやがって」
「追うぞ!」
男二人もしっかりついて来た。
俊が入ったビルは、相当古いらしく、内装も汚く、人影もない。
入ってすぐ、目の前に階段があり、俊は一目散に登った。
一階…二階…三階…ひたすら登り続け、ビルの最上階・八階へ到達した。
八階は階段を出るとすぐ、吹きさらしの屋上になっている。この大雨で、フロアには水がたまっていた。
俊は観念したように屋上へ出て、男二人を待った。
「!追いついたぜ。走らせやがって」
「へっ、年貢の納め時だな!死にたく無かったら大人しく捕まりな!」
二人は俊に迫った。俊の後ろにはもう、俊と同じ位の鉄柵があるだけ…逃げ道はない。
「くっ!畜生!」
進退極まって、俊は懐に忍ばせてした短刀を手に、男二人に切りかかった。
「!こいつ…」
男の一人がとっさに銃を抜き、俊の右肩を撃ち抜いた。
その衝撃で俊の体は大きく後退し、勢い余って鉄柵の外へ…
「そっそんな!…うわあああっ!」
「!ここは八階…即死だな…くくっ」
落ちてゆく俊の体。その時間は永遠のように永く感じられ、身体中に恐怖が走った。
(いやだ…死にたくない!誰か…誰か助けてくれ!)  続きを読む


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2007年02月13日

ブログ小説2

『今宵彼女は夢を見る』後編・ピーターパンとオルゴール


「う…ぅ…ん」
気がつくと、明日香はコタツで眠っていた。寒さで目が覚め、重い瞼を開けた。枕代わりにした座布団の横には、沙由里から貰ったあのオルゴールがあった。
「…?あれ?…ここは…?」
体を起こして周りを見回した。いつもと何かが違う。部屋の雰囲気、家具の配置…違和感を感じたが、何か懐かしくもあった。
(それに、部屋が凄く散らかっている…朝出て行く時は綺麗だったのに。私…どうしたんだろう?確か、家に帰ってそれから…あの沙由里って人から貰ったオルゴールを開けて…)
戸惑っていると、部屋のドアが開いて、誰かが入ってきた。
「あ、明日香起きたんだ。おはよー。またシャワー借りてたよ」
「?!京子?」
そこに現れたのは、2年前、大学卒業と同時に実家の名古屋に帰ったはずの同級生・池上京子だった。
「京子…実家に戻ったんじゃなかったの?」「?何言ってんの、明日香?昨日は二人で、このあなたの家で飲んだじゃない。…飲み過ぎ?」
名古屋に行ったはずの友人?昨日?飲んだ?会社は?ここは?
明日香はまず落ち着いて、状況を整理した。「ねぇねぇ京子、今は何年何月何日何曜日?」
「えぇ?(明日香…相当飲んだみたいね。まぁいっか)今日は、2002年の11月3日金曜日だよ」
「…で、ここは?住所は?」
「………ここはあなたの家、神奈川県川崎市多摩区管稲田堤の…詳しく番地とかは分からないけど、とにかくここは、あなたの家!…明日香、大丈夫?飲みすぎじゃない?」
地方へ行ったはずの友人、2002年11月という日付、そして昔一人暮らししていた稲田堤の家。明日香は改めてあのオルゴールの存在を思い出した。
「(…まさか本当に過去に戻れるなんて……でも…夢かもしれない。念には念を入れないと)ねぇ京子、ちょっと私のほっぺをツネってみてよ」
「ええっ?」
明日香は笑顔だが本気だった。そんな彼女に、京子は若干引いた。
「何言ってんの?明日香…本当に大丈夫?」「大丈夫だから!お願い!」
あまりに明日香がせがむので、京子も仕方なく、彼女の右頬をギュッとツネってあげた。「痛い…でも、何も起きない…夢から醒める感じもない。ということは、本当に過去に戻ったのね!」
ツネられたのにも関わらず、大喜びの明日香。京子は益々引いた。
(凄い…凄いわ、あのオルゴール。本当に過去に戻れるなんて…あぁ、幸せだわ…)
「あ…明日香ぁ、あなた昨日飲みすぎたんじゃない?…何か朝から変だよ」
「京子、私は大丈夫だよ!テンション高いのは、何ていうか…凄い嬉しい事があったからなの!(あぁ…これからまた、あの楽しかった学生時代を過ごす事が出来る…部活や飲みや合宿…考えただけでワクワクするわ!)
それからの明日香は、大学2年生として文字通り大学生活をスタートさせた。
その全てが、記憶の中にあるもの。一番楽しかった時代。若干、自分の知る過去と違う部分はあるものの、それもまた、新鮮な(というのは変かもしれないが)刺激として受け入れ、明日香は生活を楽しんだ。  続きを読む


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2007年02月13日

ブログ小説2

『今宵彼女は夢を見る』前編・蜃気楼の時間

『明日香、いよいよ今日から大学が始まるね。頑張ろう!』
『明日香、今日は明日香の家で飲もうよ!』『明日香、今日から合宿が始まるねー!楽しみだね!』
(…京子?…これは大学時代の…何故こんなに時間は経つのが早いものなの?私もいつの間にか社会人になって、2年。いつの間にか今日は昨日になって、今日は明日になって行く…このまま、私どうなるの?)

「…はっ!」
明日香は顔が撫でられる感覚を感じて、目を覚ました。
「シキ」
目を開けると、愛猫のシキがベッドに乗って来て、明日香の顔をなめていた。
時計は6時30分を回っていた。ベッドの正面にある窓のカーテンからは、きれいな朝日が差し込んでいた。
「もう朝か…シキもお腹が空いたんだよね。今ご飯をあげるから」明日香はベッドから降りて、キッチンからキャットフードとボールを持ってきた。
ボールにキャットフードを入れてあげると、シキはすぐさま飛びついてきた。
「美味しそうに食べるね。…シキも、うちに来てもう2年だね」
シキは明日香が社会人になってすぐ、仕事帰りに家の近くで捨てられていた猫だった。社会人になりたての不安と、一人暮らしの寂しさを紛らすために明日香が拾って、大家に内緒で飼い続けていた。「じゃあ、行ってくるね」
明日香はシキが食べ終わるのを見届けてから、家を出た。  続きを読む


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2007年02月13日

ブログ小説『彼女が微笑む時』

☆最終回・愚か者への挽歌編・後編☆
一片の友情

「涼が?」
それは、2007年12月24日の夜のこと。都子は同級生の雪彦から連絡を受けた。
「そうなんだ…二人で飲んでた帰り、店を出て横断歩道を渡ろとしたら…急に車が突っ込んで来て…」
電話越しから動揺しきった雪彦の声が聞こえる。はっきりした状況は掴めなかったが、とにかく、横断歩道を渡ろうとした時、暴走車が突っ込んで来て、それに撥ねられたとか…
「涼も結構酔っていたんで、とっさの反応ができなかったんだ…」
「分かった。とにかくすぐに病院に向かうよ。場所は?…東神奈川の…すぐに行くわ」
電話を切るなり都子は家を飛び出した。時刻は午後11時45分。電車があるかどうか微妙な時間帯だったが、都子はお構いなしに駅を目指した。
外はかなり冷え込みんでいて、雪がちらつき始めていた。…今日はクリスマス・イブ。正にホワイト・クリスマスというべきシュチエーションだが、そんなことを考えてる余裕もなく、都子はひたすらに走った。

最寄りの港南台駅に着いたのは12時3分前。Suicaを自動改札に叩きつけ、12時丁度発の赤羽行き最終電車に駆け込んだ。
「…よりによってイブの日に、何でこんな…」
電車に乗るなり、空いている座席に力なく座り、都子は顔を覆った。
都子は涼の無事を祈りながら考えた。…このシュチエーションは、1年前とよく似ている。都子はこの後、植物状態に陥り、回復の見込みは薄いと宣告された。
が、事故から約一ヶ月後。都子は奇跡的に回復したのだ。
(何故突然?)
都子は原因を知りたがった。しかし、医者に聞いても、
『いやぁ、我々にもよく分からないんですよ。もはや奇跡としか…』
と言うばかりで、答えは分からなかった。
『まぁいいじゃないか。助かったんだから』涼はこう言った。
もちろんその通りである。が、都子は何か腑に落ちなかった。
というのも、都子が植物状態から回復した直後、涼は心臓発作を患い、死線をさまよった。
その3日後、涼は無事に回復したものの、今度は同級生の真輔が同じく心臓発作を患い、一週間後に他界してしまった。
更に後輩の遥も時期を同じくして謎の失踪…自分の事故を境目に、大変なことが続発していた。
(それは何故?)
いくら考えても答えは出ない。涼の事故で動揺していたこともあり、しまいには
『私に関わった人は不幸になってしまうのでは…』
などとネガティブなことも考えるようになっててしまっていた。
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2007年02月13日

ブログ小説『彼女が微笑む時』

☆第六話☆
愚か者への挽歌編中編
彼女が微笑む時〜電車の二人〜

「う…ぅ…ん」
涼は寒さで目を覚ました。
「?!ここは一体…」気がつくと、涼は電車のボックス席の、窓側に座っていた。
涼の他に乗客はなく、窓の外には雪に包まれた山々と、湖が広がっている。電車はゆっくりと動き出した。
「どういうことなんだ?確か俺は、都子を治すために死んだはず…ここはどこなんだ?」
その時、車内アナウンスが入った。
『おはようございます、涼先輩。気分はどうですか?』
それは、遥の声だった。
「ハル?これはどういうことなんだ?君は一体何者なんだ?」
『まぁ落ち着いて下さい。順を追ってお話しますよ。』
涼は固唾を呑んで遥の言葉を待った。
『まず涼先輩、あなたの命を頂いたお陰で、無事都子先輩を完治させることができました』
嘘か真か…涼には確認する術がなかった。
確かに遥が猫を再生させたのは目撃したが、都子の時は見届けていない。
『納得していませんね…?』
遥は涼の心を見透かしたように言葉をかけてきた。
「当たり前さ。この目で確認したわけでもないし…いや、この空間だって、君が猫を再生させたのだって、夢なんじゃないかと思っているよ」
『…そして、都子先輩の事故も夢であって欲しい…そう思っているんですか?』
涼はぎくりとした。図星をつかれて何も言えなくなってしまった。
『図星ですか?ふふ…』
笑い声と共に、涼の前に突然遥が現れた。
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2007年02月13日

ブログ小説『彼女が微笑む時』

☆第五話☆
愚か者への挽歌編・前編
綾瀬遥の不思議なチカラ

「都子を治す方法を知っている?」
2006年12月25日の夕暮れ、『話したいことがある』と涼を半ば強制的に連れ込んだドトールの一席で、遥は真顔で言った。
『私は、都子先輩を元に戻す方法を知っている』と…
危篤状態にあり、未だ意識の回復しない都子を…涼は思わず失笑してしまった。
「何がおかしいんですか?」
でも、遥は大真面目のようだ。
「だってさぁ、都子は今、医者もサジを投げるような危篤状態なんだぜ。それをハルがどうしたら治せるっていうんだい」
さっきまで都子の手を握って泣いていたのもどこ吹く風、涼は嘲笑うように言った。   続きを読む


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2007年02月13日

ブログ小説『彼女が微笑む時』

☆第四話☆
唐木田涼の過去編後編
汚れた十字架

「涼…どうしよう」
雪奈の妊娠でっち上げからニ週間。騒動のほとぼりも徐々に冷め始め、涼も反省しそして雪奈の心の闇の部分に恐れを抱きながらも、まだ彼女と付き合っていた。
そんなある日の学校帰り、雪奈は深刻な表情で涼にこう言った。
「ん?なにが?」 「実は…本当に、できてたみたいなの」
「…ん?…それってもしや、子供がってこと?」
雪奈は無言で頷いた。だが、雪奈には前科がある。
その顔をじぃっ…と見つめる涼。彼も暫く何も言わなかったが、にやりと笑って
「またまたぁ」
と言って全くとりあわなかった。
「真面目に聞いてよ!」
雪奈は大きな声で言った。その声の大きさには周りの通行人も立ち止まるほどで、涼もさすがにただこどではないなと気付き、真剣な表情で雪奈と向き合った。
「…そりゃあ私も、この前同じ嘘をついたけど、今度は本当なの。だって…」
「だって?」
「医者に…そう言われたから…」
雪奈は涼から視線を外さない。
その表情が真剣さを伝え、彼女の話の信憑性を裏打ちしていた。それを感じとった涼の体から、油汗がだらだらと流れ出した。
大学?妊娠?就職?結婚?これから?どうする?…様々なことが涼の頭の中を駆け巡り、若干冷静さを保てなくなってきていた。
「…それでね」
雪奈はまず先に、自分の意志を伝えようと、話を続けた。
「私は産みたいの」
雪奈は短刀直入に切り出した。
その台詞を聞いた涼はますます焦り、混乱してしまった。
「涼、落ち着いて聞いて。私も実は、今後のこととか考えると…と思って、最初は産まないことを考えていたんだけど…お母さんに話したら、こう言ったの」
「なんて?」
涼は固唾を飲んだ。
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2007年02月13日

ブログ小説『彼女が微笑む時』

☆第三話☆
唐木田涼の過去編前編
ターニング・ポイント〜心ない天使の復讐劇〜
真輔と涼はもう6年来の友達だった。その真輔が、遥を見て『3年前の涼と同じ、悪いものを感じる』と言っていた。真輔の言う、3年前の涼はどんな男だったのだろうか…

今から遡ること3年、2003年1月。涼、高校3年の時。それまでは女性に対して奥手だった涼が、最初の彼女・同級生の瀬谷雪奈と付き合い始めてから、彼は変わった。新しい自分に目覚めていった。
雪奈と付き合って1ヶ月で違う女に乗り換え、また次…と、女遊びが激しくなっていったのである。入学以来の友人・真輔もこの変化には驚き、若干呆れて「涼…少しは落ち着いたらどうだ?今までのお前はそんな奴じゃなかったぞ…付き合ったら、もっと女の子を大事にする男かと思ってたのに」
と、はやる涼をたしなめた。しかし、当の本人はそんな忠告もどこ吹く風で、
「まぁ待てよ、シン。俺は何も変わっちゃいないさ。お前、自分が彼女いないからって、ひがんでいるうちに、お前自身が変わっちんじゃないのか?」
と、悪態ついて反論する有り様だった。さすがに真輔もムッとして「変わるもんか!ひがんでもないさ。…まぁいいさ。勝手にするんだな!」
もう涼の女性関係に口出しするのをやめた。涼は相も変わらず、女の尻ばかり追いかけていた。

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2007年02月13日

ブログ小説『彼女が微笑む時』

☆第ニ話☆
藤澤真輔と綾瀬遥

『じゃあね』という言葉には深さがある。人はみな、仕事が終わった時・学校が終わった時・またはデートが終わった時この言葉を使う。
それは、明日になればすぐに会えるから。…しかし。卒業式等の時に使う『じゃあね』はどういう意味合いを持つだろう。
『じゃあね』と言って次に会うのはいつだろう?1年後?十年後?それとももう会えないかもしれない。
そう考えると、普段何気なく使っている『じゃあね』も、深い意味を帯びてくる。
もし『じゃあね』と言って別れた後、遠い所に引越すことになってしまったら?交通事故に遭い、帰らぬ人になってしまったら?
…そんな言葉の魔力に翻弄される男が一人。唐木田涼。
彼はクリスマスイブというのに、彼女である都子とケンカ別れを。夜になったら謝ろうと思っていた矢先、皮肉なことに彼女は、交通事故に遭い危篤状態に陥ってしまった。『じゃあね』とも『ごめん』とも言えないまま…  続きを読む


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2007年02月13日

ブログ小説『彼女が微笑む時』

☆第一話☆
ホワイト・サイレント・ナイト

「都子が?」
それは、12月24日の夜のこと。涼は同級生の推子から連絡を受けた。
「そうなの…二人で食事していた帰り、お店を出て横断歩道を渡ろとしたら…急に車が突っ込んで来て…」
電話越しから泣きじゃくった推子の声が聞こえる。推子も相当動揺していて、はっきりした状況は掴めなかったが、とにかく、横断歩道を渡ろうとした時、暴走車が突っ込んで来て、それに撥ねられたとか…
「都子…私をかばって、自分だけ…!」
「分かった。とにかくすぐに病院に向かうよ。場所は?…東神奈川の…うん、分かった。すぐに行く。じゃあ現地で」
電話を切るなり涼は家を飛び出した。時刻は午後11時45分。電車があるかどうか微妙な時間帯だったが、涼はお構いなしに駅を目指した。
外はかなり冷え込みんでいて、雪がちらつき始めていた。…今日はクリスマス・イブ。正にホワイト・クリスマスというべきシュチエーションだが、そんなことを考えてる余裕もなく、涼はひたすらに走った。  続きを読む


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