2009年03月23日
おはようございます☆

元気に生きております矢木です、こんにちは(^∇^)/
今日はとってもイイ天気でございますね(*゜∇゜)ノ
コートもいらないほどの暖かさだったので
バスを使わず、久々に駅まで歩いてみました。
朝日を浴びる鶴見川がキレイだったので一枚☆
さぁ今日も頑張りまっか(^∇^)/
Posted by ヤギシリン。 at
06:54
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2009年03月14日
連載小説『三銃士〜光が照らすイミテーション〜』
『second cry編』
その1・止まった時計
『………今、何時だろう?』
長いまどろみの中、南は目を覚ました。
…いや。目を開けても真っ暗だ。周りに何もない。暗闇の中に、南の体が横たわっている。
(一体ここはどこだ…?俺は今まで何をしていた…?)
記憶も曖昧だ。
とりあえず…時間を確認しようと、腕を上げた。
『?!う…腕が…動かない…!』
腕だけではなく、体中が南の命令を拒んだ。
身動きすら取れない。それに。じわじわと体の至る所から激痛がやって来る。
『な…何なんだ、これは?…一体俺は何でこんなことなっているんだ?!』
記憶の糸を手繰ってみても、断片的にしか思い出せない。
『確か…ボスに黙って神楽さんの所へ行って…………でもそこでも………捜査は打ち切りってことしか聞けなかった…』
(…何故…?)
南には解せなかった。あの事件の原因は、男女2人による無理心中などではない。何か他に、もっと深い闇がある。
神楽も南の意見に賛同し、共に事件の真相究明に尽力し、情報提供にも協力的だった。
その神楽が何故、手の平を返したように捜査を止めてしまったのか。
(…どこか…大きな権力を持った所から圧力がかかったのだろうが…一体誰が…何の目的で…?)
考えても答えは出ない。…体の痛みが激しくなり、再び意識が混濁し始めた。
「………さん、南さん!」
どこからか、彼を呼ぶ声がする。
(…誰だ…?)
辺りは暗闇のまま。だが声はどんどん南に近づいてくる。
「…南さん!」
『!…け、健太郎』
南の前に姿を見せたのは、彼の後輩・旭健太郎だった。
…しかし、何とも奇妙な光景だろうか。周りは何もなく真っ暗で、南の顔の上に健太郎の顔だけが浮かんでいる。
「南さん…何でこんなことに…」
『…そりゃ俺が聞きたいよ。一体ここはどこなんだ?何でお前、そんな状態で…』
「…うぅ…南さん…目を…目を…目を開けてくれよぉ…」
『?何言ってんだ、ちゃんと開けてるじゃないか』
「…目を開けてくれ…返事をしてくれ!」
『…健太郎?俺が見えないのか?…俺の声が聞こえないのか…?俺はちゃんと…』
2人の会話はかみ合うことなく、平行線を辿った。
(…今いる空間は一体何なんだ?健太郎は…泣いている…何故?…俺は…どうなっているんだ?)
「南さん…目を開けてくれ…頼むから…」
えづく健太郎から涙がこぼれた。その涙は彼の頬伝い、真っ直ぐ南の頭に…
『!…あ…熱い…なんだ…これは…?!』
その涙は、南の全身を焦がすような熱を持っていた。まるで導火線を伝わる種火のように、南の体を熱が走る。
体中に熱が伝播した瞬間、南は全てを思い出した。
(そ…そうだ俺は…神楽さんの所へ行った翌日、事件のあった車に乗っていた女について調査しに行ったんだ…)
女が住んでいたのは港南台。南は根岸の自宅から、原付で向かっていた。
…その途中…
(信号待ちをしていた時…後から車に…追突されたんだ!)
自分に起きた事実を思い出した瞬間、体の痛みは更に増してきた。
そして妙な浮遊感に包まれ、体がどんどん上昇していく。せっかく取り戻した記憶も、砂時計の砂が落ちるかのように、サラサラと消えていく。
『くそ、俺は死ぬのか…?…あの後から追突して来た奴も…【圧力】の一部なのか…?』
だが彼の本当の心残りは、そこではなかった。
『神楽さんに最後に会ったあの日…神楽さんは密かに教えてくれた。事件の鍵を。…あの女だ。車で死んでいた女が、真相究明のヒントになっているんだ!』
このままでは死んでも死にきれない。南は力を振り絞って、
「け…健太郎!…あの事件の鍵は…女だ。…車の女を…調べ…ろ…」
「?!南さん!意識が…?」
…だが二度と、南が言葉を発することはなかった。
「………南さん………」
南が戸塚新聞社を飛び出してから2日後のことであった。
続く
その1・止まった時計
『………今、何時だろう?』
長いまどろみの中、南は目を覚ました。
…いや。目を開けても真っ暗だ。周りに何もない。暗闇の中に、南の体が横たわっている。
(一体ここはどこだ…?俺は今まで何をしていた…?)
記憶も曖昧だ。
とりあえず…時間を確認しようと、腕を上げた。
『?!う…腕が…動かない…!』
腕だけではなく、体中が南の命令を拒んだ。
身動きすら取れない。それに。じわじわと体の至る所から激痛がやって来る。
『な…何なんだ、これは?…一体俺は何でこんなことなっているんだ?!』
記憶の糸を手繰ってみても、断片的にしか思い出せない。
『確か…ボスに黙って神楽さんの所へ行って…………でもそこでも………捜査は打ち切りってことしか聞けなかった…』
(…何故…?)
南には解せなかった。あの事件の原因は、男女2人による無理心中などではない。何か他に、もっと深い闇がある。
神楽も南の意見に賛同し、共に事件の真相究明に尽力し、情報提供にも協力的だった。
その神楽が何故、手の平を返したように捜査を止めてしまったのか。
(…どこか…大きな権力を持った所から圧力がかかったのだろうが…一体誰が…何の目的で…?)
考えても答えは出ない。…体の痛みが激しくなり、再び意識が混濁し始めた。
「………さん、南さん!」
どこからか、彼を呼ぶ声がする。
(…誰だ…?)
辺りは暗闇のまま。だが声はどんどん南に近づいてくる。
「…南さん!」
『!…け、健太郎』
南の前に姿を見せたのは、彼の後輩・旭健太郎だった。
…しかし、何とも奇妙な光景だろうか。周りは何もなく真っ暗で、南の顔の上に健太郎の顔だけが浮かんでいる。
「南さん…何でこんなことに…」
『…そりゃ俺が聞きたいよ。一体ここはどこなんだ?何でお前、そんな状態で…』
「…うぅ…南さん…目を…目を…目を開けてくれよぉ…」
『?何言ってんだ、ちゃんと開けてるじゃないか』
「…目を開けてくれ…返事をしてくれ!」
『…健太郎?俺が見えないのか?…俺の声が聞こえないのか…?俺はちゃんと…』
2人の会話はかみ合うことなく、平行線を辿った。
(…今いる空間は一体何なんだ?健太郎は…泣いている…何故?…俺は…どうなっているんだ?)
「南さん…目を開けてくれ…頼むから…」
えづく健太郎から涙がこぼれた。その涙は彼の頬伝い、真っ直ぐ南の頭に…
『!…あ…熱い…なんだ…これは…?!』
その涙は、南の全身を焦がすような熱を持っていた。まるで導火線を伝わる種火のように、南の体を熱が走る。
体中に熱が伝播した瞬間、南は全てを思い出した。
(そ…そうだ俺は…神楽さんの所へ行った翌日、事件のあった車に乗っていた女について調査しに行ったんだ…)
女が住んでいたのは港南台。南は根岸の自宅から、原付で向かっていた。
…その途中…
(信号待ちをしていた時…後から車に…追突されたんだ!)
自分に起きた事実を思い出した瞬間、体の痛みは更に増してきた。
そして妙な浮遊感に包まれ、体がどんどん上昇していく。せっかく取り戻した記憶も、砂時計の砂が落ちるかのように、サラサラと消えていく。
『くそ、俺は死ぬのか…?…あの後から追突して来た奴も…【圧力】の一部なのか…?』
だが彼の本当の心残りは、そこではなかった。
『神楽さんに最後に会ったあの日…神楽さんは密かに教えてくれた。事件の鍵を。…あの女だ。車で死んでいた女が、真相究明のヒントになっているんだ!』
このままでは死んでも死にきれない。南は力を振り絞って、
「け…健太郎!…あの事件の鍵は…女だ。…車の女を…調べ…ろ…」
「?!南さん!意識が…?」
…だが二度と、南が言葉を発することはなかった。
「………南さん………」
南が戸塚新聞社を飛び出してから2日後のことであった。
続く
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2009年03月14日
連載小説『三銃士〜光が照らすイミテーション〜』
その3・そして南は…
「…なんだって?よく聞こえなかったな。もう一度言ってくれないか、ボス…」
小雀町での自動車火災事件が発生してから丁度1ヶ月。南は戸塚新聞社の編集長であり社長である金沢に詰め寄った。
「…言葉通りだ。あの火災事件は、男女2人による無理心中だった。警察もそのように発表している。よって、調査も取材も打ち切りとなった。…以上だ」
金沢は県警から送られてきた報告書を手渡した。そして、南の意見を聞こうともせず、業務に戻った。何か、腫れ物には触るべからず、といったような雰囲気が感じられる。
「ちょっと待てよ!」
この1ヶ月間、死に物狂いで事件を追いかけて来た南にしてみれば、渡された紙きれ一枚でコトを収めろなど、納得できるものではない。もう一度金沢に食ってかかった。
「…無理心中と断定した…だって?そんな話、納得できるワケがない。あの事件には、まだまだ不信な点がいくつもあるんだ」
「もう済んだことだ」
金沢は取り合おうともしない。
「いいから聞けよ!」
南も負けずに、金沢を強引に引き戻した。
「いいか…確かに車に乗っていた2人の死因は刃物による刺傷だ。現に焼け跡から、使用された包丁も見つかっている。男の方が握っていたんだ」
「………」
「だが、包丁は右手に握られていた。…その男は左利きだったのにだ!」
「…それで?」
「おかしいと思わないのかよ!」
オフィス内に南の声が響きわたる。
「なんだって左利きの人間が、右手に凶器持って無理心中なんかしようとするんだよ!おかしいだろ!」
「…南!」
今度は金沢が声を荒げて南を制した。
「…この件はもう決着がついたんだ。追わなくていい」
「……っ!あんたはそれでいいのかよ!…俺達の仕事は、メディアを通じて世間に真実を伝えることじゃないのかよ!……事実に目をつぶってそうやって…ケチな不動産広告のバイトだけやってて満足なのかよ!」
南は感情のままに、金沢のデスク上の広告ラフ案をぶちまけた。
金沢は南の言葉に答えるでもなく、ただ
「…もう一度言う。もうこの件は追うな。…また昔のようになるぞ」
とだけ言って、床に散らばり落ちたラフ案を拾い上げ、再び業務に戻った。
(…昔?昔って……俺が左遷された時のことを言っているのか…?だとすれば…この事件、単なる火災事故や刺傷事件じゃないのか…?)
更なる深い闇が隠されているのだろうか。
(…汚職事件を追った時は、公表されると政局不信が日本中にはびこる…という理由で、お上から圧力がかかった。…だが…今回のは何だ?横浜の片田舎で起きた事なのに、一体どこの誰が圧力をかけるってんだ?)
考えれば考える程、溢れ出る好奇心と疑問を押さえきれない。
(…あの時は、政治の圧力に屈し、事実の追求を諦めた…だが…だが今回は!必ず真実を暴いてみせる。そうじゃなきゃ…新聞記者に戻った意味がない。例え小さな地方紙であっても、この事件は必ず白日の下に晒すんだ!)
「…分かったよ、ボス。俺はこの件から降りる。…また街に出て、新しいネタを探してくるよ…」
怒鳴り散らしていたテンションはすっかり鳴りを潜め、南は肩を落として下がった。
(…!南さん、諦めちゃうのかよ?!)
南と金沢のやりとりを傍らで聞いていた旭健太郎。南の記者精神を尊敬している彼は、急いで後を追いかけた。
「南さん!」
オフィスを出て、原付に乗ろうとしていた南を呼び止めた。
「よぉ、健太郎」
「南さん、俺、さっきの話ずっと聞いてたんです。…本当にあの事件の取材、諦めちゃうんですか?」
南はニヤリと笑い、
「そんなワケあるかよ。まだまだ深い事情がありそうだからな」
「じゃあ今からも…」
「おう。神楽さんに会って、なんで捜査打ち切りになったか詰めてくる」
じゃあな。事件が記事になるのを楽しみにしてな、と言い残して原付を走らせた。
戸塚の街は日が落ちかけ、夜が空を覆おうとしていた。その闇が南を飲み込んだかのように、彼はそれっきりオフィスに戻って来なくなってしまった。
続く
「…なんだって?よく聞こえなかったな。もう一度言ってくれないか、ボス…」
小雀町での自動車火災事件が発生してから丁度1ヶ月。南は戸塚新聞社の編集長であり社長である金沢に詰め寄った。
「…言葉通りだ。あの火災事件は、男女2人による無理心中だった。警察もそのように発表している。よって、調査も取材も打ち切りとなった。…以上だ」
金沢は県警から送られてきた報告書を手渡した。そして、南の意見を聞こうともせず、業務に戻った。何か、腫れ物には触るべからず、といったような雰囲気が感じられる。
「ちょっと待てよ!」
この1ヶ月間、死に物狂いで事件を追いかけて来た南にしてみれば、渡された紙きれ一枚でコトを収めろなど、納得できるものではない。もう一度金沢に食ってかかった。
「…無理心中と断定した…だって?そんな話、納得できるワケがない。あの事件には、まだまだ不信な点がいくつもあるんだ」
「もう済んだことだ」
金沢は取り合おうともしない。
「いいから聞けよ!」
南も負けずに、金沢を強引に引き戻した。
「いいか…確かに車に乗っていた2人の死因は刃物による刺傷だ。現に焼け跡から、使用された包丁も見つかっている。男の方が握っていたんだ」
「………」
「だが、包丁は右手に握られていた。…その男は左利きだったのにだ!」
「…それで?」
「おかしいと思わないのかよ!」
オフィス内に南の声が響きわたる。
「なんだって左利きの人間が、右手に凶器持って無理心中なんかしようとするんだよ!おかしいだろ!」
「…南!」
今度は金沢が声を荒げて南を制した。
「…この件はもう決着がついたんだ。追わなくていい」
「……っ!あんたはそれでいいのかよ!…俺達の仕事は、メディアを通じて世間に真実を伝えることじゃないのかよ!……事実に目をつぶってそうやって…ケチな不動産広告のバイトだけやってて満足なのかよ!」
南は感情のままに、金沢のデスク上の広告ラフ案をぶちまけた。
金沢は南の言葉に答えるでもなく、ただ
「…もう一度言う。もうこの件は追うな。…また昔のようになるぞ」
とだけ言って、床に散らばり落ちたラフ案を拾い上げ、再び業務に戻った。
(…昔?昔って……俺が左遷された時のことを言っているのか…?だとすれば…この事件、単なる火災事故や刺傷事件じゃないのか…?)
更なる深い闇が隠されているのだろうか。
(…汚職事件を追った時は、公表されると政局不信が日本中にはびこる…という理由で、お上から圧力がかかった。…だが…今回のは何だ?横浜の片田舎で起きた事なのに、一体どこの誰が圧力をかけるってんだ?)
考えれば考える程、溢れ出る好奇心と疑問を押さえきれない。
(…あの時は、政治の圧力に屈し、事実の追求を諦めた…だが…だが今回は!必ず真実を暴いてみせる。そうじゃなきゃ…新聞記者に戻った意味がない。例え小さな地方紙であっても、この事件は必ず白日の下に晒すんだ!)
「…分かったよ、ボス。俺はこの件から降りる。…また街に出て、新しいネタを探してくるよ…」
怒鳴り散らしていたテンションはすっかり鳴りを潜め、南は肩を落として下がった。
(…!南さん、諦めちゃうのかよ?!)
南と金沢のやりとりを傍らで聞いていた旭健太郎。南の記者精神を尊敬している彼は、急いで後を追いかけた。
「南さん!」
オフィスを出て、原付に乗ろうとしていた南を呼び止めた。
「よぉ、健太郎」
「南さん、俺、さっきの話ずっと聞いてたんです。…本当にあの事件の取材、諦めちゃうんですか?」
南はニヤリと笑い、
「そんなワケあるかよ。まだまだ深い事情がありそうだからな」
「じゃあ今からも…」
「おう。神楽さんに会って、なんで捜査打ち切りになったか詰めてくる」
じゃあな。事件が記事になるのを楽しみにしてな、と言い残して原付を走らせた。
戸塚の街は日が落ちかけ、夜が空を覆おうとしていた。その闇が南を飲み込んだかのように、彼はそれっきりオフィスに戻って来なくなってしまった。
続く
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2009年03月14日
再開。
連載小説『三銃士〜光が照らすイミテーション〜』
その2・小雀町ロードサイド火災事件
戸塚区小雀町―そこは民家が少なく、林や畑が多い郊外の町であった。
しかし2008年8月15日。この日の小雀町は赤く燃え、ざわめいていた。
『戸塚新聞社』の後輩・旭健太郎のどんな小さなネタに対しても熱く取材してくる姿に、過去の自分を重ねた南は、何かに掻き立てられる様にネタを求め、街へ出た。
2時間ほど奔走したが、手応えは得られず…仕方なくオフィスへ戻ろうと帰路についた。
そんな折、通りかかった小雀町の林の一角で、1台の乗用車が炎上しているのを発見。激しく燃える炎のためによくは見えなかったが、どうやら車内に人がいるようだった。
…が、中の人はもがくこともしなかった。
「これは…ただごとじゃあないな」
即座に事件性を感じ取った南は、懇意にしている戸塚警察署の刑事・神楽と、消防へ連絡を入れた。
「…早急な連絡、感謝するよ。南。この場所は木々が多い…消化が遅れていたら、想像以上の火事になってるところだ」
連絡を入れてから10分弱。神楽は消防隊と警官数名を引き連れてやってきた。
程なくして、車の炎は消し止められた。
「どういたしまして。それより、まだ車の中に人がいたみたいなんだ。それは…」
「あぁ、もう確認したよ。だが…」
神楽はゆっくりと焼け焦げた車に近づき、運転席と助手席を指差した。
「…見えるかい?被害者は2名。…もちろん死んでいる…が…身元はおろか、性別も判定できるかどうか?…という状況さ」
「…!!せ…性別さえ分からないような…?」
思わず南は息をのんだ。
…確かに…遠目から見ても遺体の損傷は著しく、直視できなかった。
「…一体何があったんだろう…」
「ふむ。事件なのか?事故なのか?これから色々調べてみないとな。ただ…」
神楽はちらりと車を見た。
「見た所、車体の損傷はないように思える。と、いうことは…」
「何かの事件…?」
「そうなる。………不謹慎だな、南。人が死んだというのに、少し嬉しそうだぞ」
「え…そんなことは…」
思わず顔に手をやった。
「…ま、それも新聞記者としてのサガなのかな…進展があったらすぐ連絡するよ」
「いつもすまない」
「気にするな、いい記事を書いてくれよ」
その後の現場は神楽に任せ、南はオフィスへの帰路についた。
「ただいま…」
戸塚駅前のオフィスに着いたのは、21時を過ぎた頃だった。編集長の金沢や他のメンバーは既に帰宅しており、残っているのは旭健太郎だけだった。
「あ、南さん、お疲れ様です」
「あぁ健太郎。まだ残ってたのか」
「ちょっと明日の取材の準備があって…南さんの方は何か収穫がありましたか?」
「まぁな。久々のスクープ記事になりそうなネタがあってな…」
南は事の顛末を話した。それを聞いていた健太郎の表情も、明らかに嬉しそうだった。
「…やはりサガか…」
「え?なんですか?」
「…あ、いや、なんでもない」
だがやはり、あの出来事を思い返しながら話して聞かせた南も、興奮を隠しきれずにいた。
あの車に乗っていた人達はどんな人間なのか?誰なのか?何故あの場所にいたのか?車体に損傷がないのは何故?それなのに燃えていたのは何故?火をつけたとしたら誰が?…湧き上がる好奇心と疑問を抑えきれない。
(…この事件は、俺が記者として復活するための第一歩だ。必ず真相を突き止め、事の次第を全て報道してみせる。…あの時とは違って、今俺が所属しているのは小さな新聞社だ。…誰にも邪魔させるものか!)
かつて大手新聞社の記者として日夜事件を追い続けていた日々の血が蘇り、怠惰だった日々に変化を与えた。
翌日もいち早く事件の真相を知るために、朝一番で戸塚警察署の神楽の元へと足を運んだ。
「神楽さん、昨日の火事について何か進展は?やはり何らかの事件なのか?」
神楽を見つけるなり捕まえて質問を浴びせた。神楽も苦笑いして
「…おはようもなく、いきなりそれか。まぁお前らしいといえばそうか」
「失礼失礼。どうにも昨日から気がはやってて…」
「…そうか、ではこの資料は、その気の高ぶりにもっと火をつけてしまうかもな」
神楽は一枚の書類を南に手渡した。書類には『小雀町ロードサイド火災事件報告書』と銘打ってあった。
(事件…て書くってことはやはり、ただの事故じゃない…?)
南の疑問はすぐに解決された。
「……!これは…!…『炎上した車内からは男女2名の遺体が発見された。損傷が酷く、まだ身元の確認はされていない。検死の結果、死因は鋭利な刃物による刺傷と断定』…だって?!」
急転直下、事態は風雲急を告げていた。
続く
その2・小雀町ロードサイド火災事件
戸塚区小雀町―そこは民家が少なく、林や畑が多い郊外の町であった。
しかし2008年8月15日。この日の小雀町は赤く燃え、ざわめいていた。
『戸塚新聞社』の後輩・旭健太郎のどんな小さなネタに対しても熱く取材してくる姿に、過去の自分を重ねた南は、何かに掻き立てられる様にネタを求め、街へ出た。
2時間ほど奔走したが、手応えは得られず…仕方なくオフィスへ戻ろうと帰路についた。
そんな折、通りかかった小雀町の林の一角で、1台の乗用車が炎上しているのを発見。激しく燃える炎のためによくは見えなかったが、どうやら車内に人がいるようだった。
…が、中の人はもがくこともしなかった。
「これは…ただごとじゃあないな」
即座に事件性を感じ取った南は、懇意にしている戸塚警察署の刑事・神楽と、消防へ連絡を入れた。
「…早急な連絡、感謝するよ。南。この場所は木々が多い…消化が遅れていたら、想像以上の火事になってるところだ」
連絡を入れてから10分弱。神楽は消防隊と警官数名を引き連れてやってきた。
程なくして、車の炎は消し止められた。
「どういたしまして。それより、まだ車の中に人がいたみたいなんだ。それは…」
「あぁ、もう確認したよ。だが…」
神楽はゆっくりと焼け焦げた車に近づき、運転席と助手席を指差した。
「…見えるかい?被害者は2名。…もちろん死んでいる…が…身元はおろか、性別も判定できるかどうか?…という状況さ」
「…!!せ…性別さえ分からないような…?」
思わず南は息をのんだ。
…確かに…遠目から見ても遺体の損傷は著しく、直視できなかった。
「…一体何があったんだろう…」
「ふむ。事件なのか?事故なのか?これから色々調べてみないとな。ただ…」
神楽はちらりと車を見た。
「見た所、車体の損傷はないように思える。と、いうことは…」
「何かの事件…?」
「そうなる。………不謹慎だな、南。人が死んだというのに、少し嬉しそうだぞ」
「え…そんなことは…」
思わず顔に手をやった。
「…ま、それも新聞記者としてのサガなのかな…進展があったらすぐ連絡するよ」
「いつもすまない」
「気にするな、いい記事を書いてくれよ」
その後の現場は神楽に任せ、南はオフィスへの帰路についた。
「ただいま…」
戸塚駅前のオフィスに着いたのは、21時を過ぎた頃だった。編集長の金沢や他のメンバーは既に帰宅しており、残っているのは旭健太郎だけだった。
「あ、南さん、お疲れ様です」
「あぁ健太郎。まだ残ってたのか」
「ちょっと明日の取材の準備があって…南さんの方は何か収穫がありましたか?」
「まぁな。久々のスクープ記事になりそうなネタがあってな…」
南は事の顛末を話した。それを聞いていた健太郎の表情も、明らかに嬉しそうだった。
「…やはりサガか…」
「え?なんですか?」
「…あ、いや、なんでもない」
だがやはり、あの出来事を思い返しながら話して聞かせた南も、興奮を隠しきれずにいた。
あの車に乗っていた人達はどんな人間なのか?誰なのか?何故あの場所にいたのか?車体に損傷がないのは何故?それなのに燃えていたのは何故?火をつけたとしたら誰が?…湧き上がる好奇心と疑問を抑えきれない。
(…この事件は、俺が記者として復活するための第一歩だ。必ず真相を突き止め、事の次第を全て報道してみせる。…あの時とは違って、今俺が所属しているのは小さな新聞社だ。…誰にも邪魔させるものか!)
かつて大手新聞社の記者として日夜事件を追い続けていた日々の血が蘇り、怠惰だった日々に変化を与えた。
翌日もいち早く事件の真相を知るために、朝一番で戸塚警察署の神楽の元へと足を運んだ。
「神楽さん、昨日の火事について何か進展は?やはり何らかの事件なのか?」
神楽を見つけるなり捕まえて質問を浴びせた。神楽も苦笑いして
「…おはようもなく、いきなりそれか。まぁお前らしいといえばそうか」
「失礼失礼。どうにも昨日から気がはやってて…」
「…そうか、ではこの資料は、その気の高ぶりにもっと火をつけてしまうかもな」
神楽は一枚の書類を南に手渡した。書類には『小雀町ロードサイド火災事件報告書』と銘打ってあった。
(事件…て書くってことはやはり、ただの事故じゃない…?)
南の疑問はすぐに解決された。
「……!これは…!…『炎上した車内からは男女2名の遺体が発見された。損傷が酷く、まだ身元の確認はされていない。検死の結果、死因は鋭利な刃物による刺傷と断定』…だって?!」
急転直下、事態は風雲急を告げていた。
続く
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2009年03月14日
帰還

去年からずっと……
アメブロに出張しておりました(・・。)
何故このタイミングではまいちに戻ってきたのか?
それは…
はまいちを運営している会社にやってきたからでした(^^ゞ
この数ヶ月、色々ありましたが
以前のように小説載せたり
日記書いたりしていきますんで
これからもまた
よろしくお願いします(^∇^)/
Posted by ヤギシリン。 at
19:53
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